裁判外紛争解決手続(ADR)について

裁判によることもなく、法的なトラブルを解決する方法、手段など一般を総称する言葉です。例えば、仲裁、調停、あっせんなど、様々なものがあります。

裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律では、「訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続」というものとしています。

※ 英語では、「Alternative Dispute Resolution」(「裁判に代替する紛争解決手段」)といい、我が国でも、頭文字をとって「ADR(エー・ディー・アール)」と呼ばれることがあります。

※ 「仲裁」は、当事者の合意(仲裁合意)に基づいて、仲裁人で構成される仲裁廷が実案の内容を調べた上で判断(仲裁判断)を示し、当事者がこれに従うべきこととなる手段です。

「調停」、「あっせん」とは、当事者の間を調停人、あっせん人が中立的な第三者として仲介し、トラブルの解決についての合意ができるように、話し合いや交渉を促進したり、利害を調整したりする手続です。

裁判とかいけつサポートの違い(主なもの)

裁判かいけつサポート
実施主体裁判官各分野の専門家
秘密の保護公開非公開
手続きの進行民事訴訟法に従った手続進行ニーズに応じた柔軟な手続進行が可能
費用裁判所の訴訟費用ADR機関に支払う費用
強制執行力あるなし

民間ADRの業務の認証制度(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)の概要

○ 紛争の当事者がその解決を図るのにふさわしい手続を選択することを容易にし、もって国民の権利の適切な実現に資することを目的
○ 法定の基準・要件に適合するものを法務大臣が認証
○ 認証を受けた民間ADRの利用に関し、所定の要件の下に、時効の完成猶予、訴訟手続の中止等の法的効果が付与
○ 利用者に紛争解決手続についての選択の目安を提供するため、認証ADRの業務に関する情報を法務省ホームページ等において公表
○ 平成19年4月1日施行

裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の概要(概要:PDF)

かいけつサポートの特徴

例えば・・・

  • 友人に金を貸したが、なかなか返してくれない。分割でもいいから、早く払ってもらえるように話し合いをしたい。
  • 会社が給料を払ってくれないが、裁判にはしたくない
  • 近所の飲食店が夜中までカラオケ営業をするのでうるさくて眠れない。今更引っ越しはできないし、周囲の生活環境にも配慮して営業してもらえるよう、話し合いでルールを決めたい。
  • 自動車が走行中に故障したが、製品に欠陥があるように思う。メーカーに調査と無償修理をしてもらえるように話し合いをしたいが、詳しい専門家に調停人になってもらいたい。

こんな時、話し合いによる

紛争解決手続(かいけつサポート)

によって解決する方法もあります。

1.法務大臣の認証を取得するためには、法律で定められた、公正中立性を確保するための厳格な基準をクリアしなければなりません

基準の主なもの
(1)トラブルの内容に応じた専門家を紛争解決の手続を進める人(調停人)として選任できるよう、専門的人材を確保しているか

(2)当事者のプライバシーや営業秘密などを守るための体制は整っているか

(3)当事者と利害関係のある人が調停人とならないような仕組みが備わっているか。

(4)手続を利用する前に、手続の内容や費用など、法務省が定めた事項を説明することとしているか 等

2.かいけつサポートを利用した場合の法的効果(時効の完成猶予)

「かいけつサポート」を利用しても、話し合いがうまくまとまらず、解決に至らないこともあります。その後、裁判に訴えてはみたものの、話し合いをしているうちに時効が成立して権利が消滅してしまっていたということも、考えられなくはありません。しかし、「かいけつサポート」を利用していれば、一定の場合に、本来の時効期間の満了時期を過ぎても、所定の時期を経過するまでは時効が完成しない(法律的には「時効の完成猶予」と呼ばれています。)ものと法律で定められています。

かいけつサポートの解決事例

●民事一般

・金銭の貸し借りに関するトラブル
 申立人は、相手方に返済の意思がないと考えて、かいけつサポートを利用。
 認証事業者から相手方に連絡を取ったところ、相手方は返済方法が分からなかっただけで返済の意思があることが判明したため、返済プランを話し合うことで解決できた。

・近隣関係のトラブル
 申立人は、相手方(隣家の住民)が、申立人の家の屋根に鳥の餌をまいたり、庭に猫の餌を置いたりして不衛生であることから、その行為の中止と賠償を求めるため、かいけつサポートを利用。
 1回目の調停期日で、相手方は行為を中止すること、申立人は賠償金額の減額に応じることで、合意に達した。

・工事に関するトラブル
 申立人は、相手方に工事を依頼したが、工事の際、別の設備の配管を切断されたことから、その損害賠償を求めるため、かいけつサポートを利用。
 1回目の調停期日で、相手方の責任において当該設備の撤去を行い、申立人にその費用を請求しないことで和解した。

・手術に関するトラブル
 申立人(患者)は、整形外科の手術の結果と、術後の説明に納得ができないため、かいけつサポートを利用。
 1回目の調停期日で、調停員同席のもと、担当医から十分な説明と謝罪があったため、治療費の返還は求めないことで合意した。

●消費者

・契約に関するトラブル
 申立人は、エステ体験だけをするつもりで店に行ったのに、いろいろなエステを勧められ、断り切れずに美顔エステの契約をしてしまった。クーリングオフ通知をしても一部しか返金してもらえなかったため、かいけつサポートを利用。
 認証事業者から相手方(エステ事業者)に申し入れて、全額返金された。

●金融・保険

・金融商品取引に関するトラブル
 申立人は、相手方が、金融商品取引に全く無知の申立人に対して、銘柄の選択や投資金額、時期等を明確に告げることなく、過当な数量の株式取引を勧めて売買させ、多額の損害を被らせたとして、損害賠償を求めるため、かいけつサポートを利用。
 認証事業者から、個々の取引について申立人が承諾して取引したことに争いはないが、申立人の投資経験等に鑑みて、個々の取引の必要性や銘柄の内容等について、申立人が正しく理解していたかという点については疑問があるとして双方互譲が妥当との見解を示し、相手方が損害金の一部を支払うことで和解が成立した。

・共済金の支給に関するトラブル
 申立人は、入院により共済金を請求したが、支払対象外とされ、共済団体の担当部署に問い合わせても埒があかなかったため、かいけつサポートを利用。
 認証事業者から当該団体に連絡を取って約款を基に丁寧な説明をさせたことで、申立人も納得することができた。

●労働

【賃金未払い】

・残業代不払いに関するトラブル
 申立人は、勤務先の会社から残業代(時間外手当)が正当に支払われなかったため、かいけつサポートを利用。
 申立人の十分納得できる金額を相手方(会社)が支払うことで、早期に調停が成立した。

【ハラスメント】

・パワハラに関するトラブル
 申立人は、パワハラを度々受けたことから、慰謝料及びパワハラによって働けなくなった期間の休業補償を求めるため、かいけつサポートを利用。
 相手方(会社)は、パワハラの事実は確認できないため慰謝料や休業補償は認められないと主張していたが、早期解決を図りたいとの意向もあり、相手方が一定の解決金を支払うことで和解した。

・セクハラに関するトラブル
 申立人(会社)は、相手方(元従業員)からセクハラの損害賠償を求められたため、かいけつサポートを利用。
 申立人が一定の和解金を支払うことで和解した。

【職場環境等】

・休憩時間に関するトラブル
 申立人(介護職員)は、昼食時も外出を禁止され、介護施設の利用者を看ながら一緒に食事をしなければならないなど休憩時間がまともに取れなかったことから、入社時から退職までの休憩時間分の賃金と精神的経済的損害に対する補償を求めるため、かいけつサポートを利用。
 相手方は、介護業界では仕方のないことと主張していたが、和解金を支払うことで和解した。

・有給休暇に関するトラブル
 申立人(有期契約労働者)は、契約終了1か月前に、有休取得の申請をしたが認められず、更に当月末での退職を迫られたことから、当初の契約どおり在籍していれば受け取ることができた賃金相当額と精神的苦痛の慰謝料を求めるため、かいけつサポートを利用。
 相手方が1か月分の賃金相当額を支払うことで和解した。

【解雇・退職】

・不当解雇に関するトラブル
 申立人は、職場における指導・監督不足等により正常な勤務ができなくなり、相手方(会社)から不当な解雇を通告されたことから、不当解雇の撤回と解決金の支払いを求めるため、かいけつサポートを利用。
 雇用関係の終了と、相手方が請求額より減額した解決金を支払うことで和解した。

・勧奨退職に関するトラブル
 申立人(使用者)は、相手方(労働者)と協議の上、勧奨退職とする合意をし、解雇通知を発行したところ、相手方から事実と異なる理由による不当解雇であるとして、65歳までの生涯賃金を請求されたため、かいけつサポートを利用。
 申立人は、相手方からの退職理由、有給買取、未払いの時間外手当及び退職金額についての請求が正当でないため、各々確定してほしいと主張していたが、認証事業者が全体の金銭和解を勧めたところ、双方が同意し、解決した。

●生活環境

【愛護動物】

・トリミング中の事故によるトラブル
 申立人(飼い主)は、トリミングサロンでトリミング中に飼い犬が死亡したことについて、当事者だけでは感情的になってしまって話し合うことができないため、かいけつサポートを利用。
 認証事業者が間に入ることで、冷静に話し合いをすることができ、トリミング室の可視化、定期的な社員教育や倫理研修の実施、チェック体制の強化、申立人の愛犬の供養をすること等、未来志向の和解に至った。

・犬の噛みつき事故によるトラブル
 申立人は、相手方(犬の飼い主)に対して、犬の噛みつき事故による治療費等を求めるため、かいけつサポートを利用。
 認証事業者が間に入ることで、今後の近隣住人同士の付き合いにも支障がないよう話し合いをすることができ、賠償額の支払いについて合意できた。

【敷金返還等】

・原状回復費用に関するトラブル
 申立人(賃借人)は、借家の退去の際、相手方(大家)から示された原状回復費用について納得できず、直接交渉しても相手方が感情的になって話し合いにならないため、かいけつサポートを利用。
 1回目の調停期日において、申立人の主張を相手方が一部受入れ、原状回復費用を減額することで和解した。

【土地の境界】

・土地の境界に関するトラブル
 申立人は、過去の土地交換の約束が次世代に引き継がれず、さらに相手方が約束を白紙に戻したことにより境界紛争に至ったため、かいけつサポートを利用。
 当初は、当事者双方が自説を主張して話し合いが進まなかったものの、6回の期日の実施場所を、紛争となっている現地や近くの公民館にするなど、柔軟に対応し、熱心な調停の実施により、お互い歩み寄って和解成立に至った。

・土地の越境によるトラブル
 申立人は、相手方(隣家の住民)が申立人所有の土地の一部を「自分の土地」だと主張して家を建ててしまい、話し合いにならないため、かいけつサポートを利用。
 調停期日を5回開催し、境界の合意を得て、越境している部分の土地を相手方が買い取ることで和解した。

●交通

【自転車事故】

・自転車事故の治療費請求に関するトラブル
 申立人は、自転車事故にあったが、当事者の話し合いだけでは治療費等を支払ってもらえるかが不安があるとして、かいけつサポートを利用。
 1回目の調停期日で、分割払いをするということで合意が成立した。

・自転車事故の対応に関するトラブル
 申立人(親権者)は、未成年者の子が自転車事故を起こしたため、その状況認識や対応に困り、かいけつサポートを利用。
 認証事業者において、状況に基づいた過失の認定と提出資料に基づいた損害の認定を行い、合意ができた。

●家事

【夫婦関係等】

・離婚協議に関するトラブル
 夫婦が、お互いに相手に対して不満を抱き、感情的になって離婚の協議をすることができなかったため、かいけつサポートを利用。
 認証事業者が間に入ることで、冷静に相手の心情に耳を傾けたことから、親権者・養育費等の離婚条件を話し合いで解決することができた。

【相続】

・相続人の間のトラブル
 申立人(姉)は、地震で半壊した亡母名義の家の解体申請の助成を受けるためには相続人全員の同意が必要であったが、相手方(妹)と話し合いが進まないため、かいけつサポートを利用。
 解体を急がねばならない状況だったことから、他の相続財産については別途の手続を取ることとして、解体申請については合意ができた。

●スポーツ

・移籍に関するトラブル
 申立人(競技者)は,部の監督と折りが合わずに企業を退社したことから、相手方(部長)に対して、移籍・登録に必要な円満退社の証明書の発行を請求するため、かいけつサポートを利用。
 申立人が一定の大会に今後参加しないこと等を条件として、相手方が退部証明書を発行し、移籍を承認するとの和解が成立した。





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